サプリの里に行ってみた1
沖縄編「クワンソウ」の里

沖縄に伝わる眠りの薬草
クワンソウの完全無農薬栽培が叶うまでのお話

何となく寝つきが悪かったり、眠りが浅かったり。睡眠にまつわる悩みを抱えている人は少なくありません。ベッドに入る前にリラックス効果の高いハーブティーを飲む、アロマオイルを使うなど、質のよい眠りのための工夫はさまざまありますが、沖縄に古くから伝わる“眠るための薬草”を知っていますか? 自然の中でのびのび育つ「クワンソウ」の里に行ってみた!

眠りを誘う、手足がしだいにポカポカする感じ

「眠り」のことを沖縄の方言では「にぃぶい」と言い、クワンソウは「にぃぶい草」と呼ばれています。昔から、寝つきが悪いと道端のクワンソウを摘んできて、白い茎の部分を煎じてお茶として飲んだり、豚肉と味噌で炒めたり、豚のレバーと島ニンジンと一緒に煮込んだ「ちむしんじ汁」という汁物にして食べていたそうです。

睡眠と体温は密接に関係すると言われます。眠くなると手足が温かくなるのは、入眠時は深部体温が下がり、熱が放出されているからです。逆に寝つきが悪いサインとして、手足の冷えがありますが、これは深部体温が下がっていないのが原因。深部体温を下げることが、良い睡眠のポイントです。クワンソウを摂ると、しだいに手足が温かくなるのを実感します。寝つきが良くなると古くから重宝されてきたのは、そのせいなのかもしれません。

「今は畑で栽培しているクワンソウですが、『昔は庭先や道端に生えていたよ~』とおばあちゃんが言っていました。昔の人はすごいですよ、現代みたいに研究や分析などしていないのに、『この野草は眠れるよ~』とか、『美味しいよ~』とか、ちゃんと知っていたのですから。沖縄にはそういうものがたくさんあって、子どもの頃から慣れ親しんできました」こう話すのは、沖縄いちばんのクワンソウの生産農家「農業生産法人 株式会社今帰仁ざまみファーム」の座間味栄太さんです。

手間がかかるけど、大事なこと。無農薬栽培へのこだわり

座間味さんのクワンソウ農園は、沖縄本島北部、本部(もとぶ)半島の今帰仁(なきじん)村にあります。ここで収穫されるクワンソウは完全無農薬栽培。それだけに、こまめに手入れをしないと、健康で生き生きしたクワンソウは育たたないのだとか。

「クワンソウ自体は育てやすい植物なのですが、うちは無農薬栽培なので手間がかかります。ひとつは除草。広大な畑を手作業で除草しています。雑草は毎日取っても生えてきますから、これはもう永遠の戦い(笑)」

また、クワンソウに限らず農作物にとって害虫は天敵。規程をきちんと守れば収穫の時期に使用しても問題がない農薬があり、実際JA(農業共同組合)からも使用の指導があるそう。しかし座間味さんの農園では、そういったものすら使用しません。「自分たちの農園では、農薬は一切使わないポリシーでやろうって決めました」

アブラムシなどの害虫は、食べても人体に害はないけれど、もしも付いてしまったら、すべて刈り取り、破棄するしかないと言います。いろいろな対策を練って実験を重ねた結果、最も効果的なのは収穫時期を早めることだったそう。

「そもそも、なぜクワンソウにアブラムシが付くかと言いますと、土の中の球根から茎が生え、増えていくうちに、茎や葉っぱ同士が密着することで湿気を溜めやすくなるからなんです。特に梅雨から夏の時期は湿気が多いので、アブラムシが付きやすい。少しでも収穫が遅れると、もう付いてしまいます。そこで、“付いてしまったアブラムシを退治する”のではなく、“付く前に刈り取る”というふうに発想を転換。つまりは、収穫のタイミングを見誤らないことが一番の策だったんです。とても単純ですが、細かな管理と経験から生み出した方法です」

「さて、どうしよう!?」から始まった、クワンソウ栽培

現在のようなクワンソウ農園になる前は、ごく普通の農家だったという座間味さん。ではなぜクワンソウを専門に栽培するようになったのかを尋ねると、意外な答えが返ってきました。

「以前はごく普通の農家で、いろいろな島野菜をつくっていました。ある日、県外の企業から『クワンソウを植えてほしい』と依頼があったんです。その企業は当時にしては珍しくクワンソウの言い伝えをよく知っていて、“これからはストレス社会だから眠りに関するビジネスが来る!”ということで、協力しました」

座間味さんたちはクワンソウの球根を国頭(くにがみ)村から糸満(いとまん)まで、沖縄中を探して買い集め、3000坪の土地に植えました。しかし、まさかの展開が!

「依頼してきた企業と突然連絡が取れなってしまったのです。正直困りましたよ。でもせっかく植えたのに、ここでやめるのはもったいない! きれいな花も咲く! これは自分たちでやってみるか!! ……となりましたが、当時クワンソウは認知度もなければ、睡眠に対する正しいエビデンスもなかった。そこで、あるベンチャー企業に相談して、眠りの成分を調べてもらいました。するとクワンソウに睡眠改善の機能があることが証明されたんです。それから10年かけて、現在のような農園へと成長しました」

今帰仁村の赤土と自然環境が、上質なクワンソウを育む

沖縄県内ではスイカの名産地として知られる今帰仁村は、野菜や果物が美味しく育つ土地として評判です。その理由は、良質な土。「国頭マージ」というミネラルたっぷりな赤土が影響しているのだそう。

「ここの土はクワンソウとの相性も良く、よく育ちます。与那国島でクワンソウを育てたいという方がいて指導をしたのですが、土壌や環境の違いで、同じように育たなかったです。球根を買ってプランター栽培にチャレンジした県外の方もいましたが、寒いのが悪いのか、やっぱりダメでしたね。そういった意味でも、今帰仁村の環境はクワンソウに最適なのだと思います」

花、葉っぱ、茎まで、丸ごと味わえるクワンソウ

今帰仁の大地の恵みをいっぱいに含んで成長したクワンソウ。花から葉っぱまで、丸ごと味わえるのがいいところです。緑蕾は、中華料理で高級食材としておなじみの金針菜(きんしんさい)。炒め物やスープなどに使用されます。9~11月頃に咲くオレンジ色の花は、天ぷら、酢の物、サラダなどに。茎の白い部分は甘みがあり、シャキシャキした食感が特長。ネギのように細かく刻んで薬味にしたり、餃子や炒め物に使ったりします。

そして、良い眠りのための機能性をもった成分は、葉に多く含まれることがわかっています。そのため、収穫すると葉の部分は乾燥させて粉末にし、サプリメントなどの原料にします。

課題は空いている農地対策。地域から発信できるようになれば!

農作物を育てるのに適した、豊かな土壌を持つ今帰仁村。しかし、課題もあります。農家に後継者がなく、長年培った農地も荒れ放題になっているところがあちこちにあるのだとか。

「雑草だらけになってしまった土地を利用して、もっとクワンソウを植えて、事業を拡大して……なんてことも考えますが、きめ細やかな管理体制が整えられるかどうか不安です。育てやすい植物ではありますが、手間がかかります。きちんとした管理ができるようになったら、とは思いますが、これからですね」

実際、県内のさまざまな地域からクワンソウを植えてみたいとの相談があるそう。

「うちは企業秘密なんてなく、持っているノウハウは可能な限り提供しています。いろいろな実験をし、試行錯誤をしてきましたからね。そういう経験をぜひ伝えて、クワンソウを普及させたいと思っています。本当は生育指導者を派遣できたらベストなんでしょうけど、まだまだ。でもいつか、ここ今帰仁村からそういう発信ができたらいいなって思っています」(2017年5月取材・撮影)

お話をうかがった方

株式会社今帰仁ざまみふぁーむ
専務取締役 兼 営業部長 座間味 栄太さん
2013年にクワンソウ事業が『OKINAWA型産業応援ファンド事業』に採択され、浦添市港川から今帰仁村に移ったそう。「クワンソウはいろんな食材とコラボレーションができます。加工食品、飲料やお菓子など、新しい商品開発をしていきたいです」